最高裁判所第一小法廷 昭和24(オ)47 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人弁護士水上孝正同間嶋権八の上告理由第一点について。
原判決は、当事者間に争のない事実と証人及び書証を総合して、原告(被上告人)
が訴外Dとの従来の関係を清算して判示のごとく昭和一六年三月二三日被告(上告
人)と婚姻の予約をし、同年五月二五日判示のごとく誓約をしたこと並びに原告は
右清算後就中右誓約後は一切Dと交渉しなかつたに拘らず、被告は深く真相を調査
することなく軽々にも原告が右誓約に反し依然Dとの交際を継続していると誤信し
同年七月一三日原告に対し被告方から退去することを求め実家に帰らせて婚姻の予
約を破棄したことが認められるとの旨の事実認定をなし、なおさらに、原告がDと
の関係を継続していたため被告方に居堪らず自ら婚姻の予約を破棄して被告方を立
去つた旨の被告(上告人)の主張事実は証拠上認めるに足りないとの旨の事実認定
をしたものである。そして原判決の右事実認定は正当であつて、経験則に反する違
法を認めることはできない。されば原判決には所論のような違法があるとはいえな
いから、論旨は採ることができない。
同第二点について。
しかし、原判決は、その挙げている証拠によつて、原告が本訴物件を嫁入荷物と
して被告方に持参し、被告方に置いたまゝ実家に帰つた事実を認定し、原告が外出
に際し屡々多数の嫁入荷物を持出したとの被告の主張は証拠上これを認めることが
できないと判示したものである。そして、原判決は、本訴物件の占有に関し、婚姻
の予約をした妻が夫の許へ持参したが夫の予約不履行のため荷物を置いたまゝ実家
へ帰つたような場合には夫がこれを保管していると認めるのが相当であり、夫が家
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族の一員であり、戸主である父や母と同居している場合でも特段の事情のない限り
右の判断を左右するものではないとして被告が本訴物件を占有しているものと認め
る旨説明している。そして以上原判決が認定しているような事実関係においては社
会通念上被告がこれを占有していると認むべきこと原判決説示のとおりであるから、
原判決には所論のような違法があるものとはいえない。本論旨も採ることができな
い。
同第三点について。
しかし、所論のような場合に裁判所が所論のように立証を促し若しくは釈明を為
すべき義務を負担し又は職権による証人訊問等職権行為を為すを必要とする法律上
の根拠を見出すことはできない。従つて、所論は、結局原審の裁量権に属する証拠
の取捨判断を非難するものに帰するから採ることができない。
同第四点について。
論旨前段は、所論第二点で説明した原判決が被告の本訴物件の占有につき為した
認定を非難するに帰するから、法律審適法の上告理由として採ることができない。
また、論旨後段で非難するコート単一枚、袷二枚、白ネル一反及び赤ナイス一反に
ついては被上告人の代理人が、昭和二二年一一月二〇日の原審口頭弁論において、
同年一〇月六日附訂正申立書(添附の目録参照)に基き請求したものであるから、
原判決が証拠によりこれが占有と価額とを認定して、その引渡並びにこれに代わる
べき支払を上告人に命じたからといつて被上告人の請求しない事項を帰せしめた違
法ありとすることはできない。本論旨も採ることができない。
よつて、民訴第四〇一条、第九五点、第八九条に従い主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 悠 輔
裁判官 真 野 毅
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裁判官 岩 松 三 郎
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